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作品リスト / 作品解説
小説
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作品名(太字は単行本) |
出版社名 |
掲載誌 |
発行年月日 |
| 光文社 | 小説宝石 9月号 | 2007 . 09 . 01 | |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 1月号 | 2006 . 01 . 10 |
| ドリアン・グレイの画仙女 | 光文社 | 異形コレクション アート偏愛 | 2005 . 12 . 20 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 12月号 | 2005 . 12 . 10 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 11月号 | 2005 . 11 . 10 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 10月号 | 2005 . 10 . 10 |
| 赤頭巾ちゃんに気をつけて | 光文社 | 小説宝石特別編集 英雄譚 | 2005 . 10 . 01 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 9月号 | 2005 . 09 . 10 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 8月号 | 2005 . 08 . 10 |
| 夜は子猫で忙しい | 徳間書店 | アニメージュ 7月号 | 2005 . 07 . 10 |
| ピーターパン・ホームシック・ブルース | 徳間書店 | SF Japan 2005 SPRING | 2005 . 03 . 31 |
| 大人はわかってくれない | 東京創元社 | ミステリーズ vol.9 | 2005 . 02 . 15 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社(カッパ・ノベルス) | ── | 2004 . 02 . 25 |
| ぼくが紳士と呼ばれるわけ | 早川書房 | SFマガジン 2003.7 | 2003 . 07 . 01 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社 | ジャーロ No.12 夏号 | 2003 . 07 . 01 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社 | ジャーロ No.11 春号 | 2003 . 04 . 01 |
| 苦艾の繭 | 光文社(光文社文庫) |
異形コレクション 酒の夜語り |
2002 . 12 . 20 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社 | ジャーロ No.10 冬号 | 2002 . 12 . 01 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社 | ジャーロ No.9 秋号 | 2002 . 10 . 01 |
| ギャングスターウォーカーズ | 光文社 | ジャーロ No.8 夏号 | 2002 . 07 . 01 |
| シガレット・ヴァルキリー | 徳間書店(デュアル文庫) |
── |
2002 . 02 . 28 |
| ボーイソプラノ | 徳間書店 |
── |
2001 . 09 . 30 |
| ペロー・ザ・キャット全仕事 | 徳間書店 |
── |
2001 . 05 . 31 |
| 血の騎士 鉄の鴉 | 徳間書店 | SF Japan 2001年春季号 | 2001 . 04 . 10 |
エッセイ・評論・紹介
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掲載誌・掲載本名 |
出版社名 |
コーナー・タイトル |
発行年月日 |
| ミステリーズ vol.11 | 東京創元社 | ミステリーズ・バー「<存在しない>人魚の唄」 | 2005 . 06 . 15 |
| ジャーロ No.15 春号 | 光文社 | GIALLOリンクエッセイ「歳々年々魔都相似たり」 | 2004 . 04 . 01 |
| ユリイカ 2004.4 | 青土社 | 特集・押井守〜映像のイノセンス 「『中国行きのスロウ・ボート』は、どこへ流れ着いたのか」 |
2004 . 04 . 01 |
| ことし読む本 いち押しガイド2003 |
メタローグ | 2002年単行本・文庫本ベスト3「至高の贅沢者の聖書」 | 2002 . 12 . 01 |
| ダ・ヴィンチ 2002.11 | メディアファクトリー | ワンダー村上春樹ランド「老兵は去り、ぼくらは残る」 | 2002 . 11 . 06 |
| ユリイカ 2002.10 | 青土社 | 特集ニール・スティーブンスン「黙示録的なロリボップ、の包み紙」 | 2002 . 10 . 01 |
| ダ・ヴィンチ 2002.7 | メディアファクトリー | なつかしの名作ファンタジーをもう一度 | 2002 . 07 . 06 |
| 新・SFハンドブック | 早川書房 | 日本人作家が選ぶ文庫SFマイ・ベスト5 | 2001 . 04 . 30 |
インタビュー
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掲載誌名 |
出版社名 |
コーナータイトル |
発行年月日 |
| 週刊新潟ウィーク!9.28号 HP | ニューズ・ライン | NEW COMER'S File | 2002 . 09 . 28 |
| All About Japan |
── |
Close Up ! | 2001 . 09 . 21 |
| ダ・ヴィンチ 2001.9 | メディアファクトリー | 注目の新進作家 | 2001 . 09 . 06 |
| (リトマス) | (中央大学学芸連盟ジャーナリズム研究会) | (吉川良太郎インタビュー) | (2001 . 07 . 01) |
| 週刊小説 6月22日号 | 実業之日本社 | デビュー(筆者からひとこと) | 2001 . 06 . 22 |
| 新潟日報 | 新潟日報社 | 新進気鋭の作家に期待 | 2001 . 05 . 27 |
| 公募ガイド 2001.3 | 公募ガイド社 | 賞と顔 | 2001 . 03 . 09 |
映像
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作品名 |
仕事内容 |
公開年月日 |
| 脚本協力 | 2007 . 09 . 01 |
コミック
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作品名 |
出版社名 | 雑誌名 |
仕事内容 |
発行年月日 |
| ライオン丸G・1〜 | スクウェア・エニックス | (ヤングガンガン) | 脚本協力 | 2007 . 03 . 24 |
| ペロー・ザ・キャット全仕事 | 徳間書店 | SF Japan 2002 夏季号 | 原作 | 2002 . 09 . 10 |
その他
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掲載誌名 |
出版社名 |
コーナータイトル |
発行年月日 |
| SFJapan 2004年冬季号 | 徳間書店 | 〈憑依都市―THE HAUNTED〉マンガ原作・対談 | 2004 . 11 . 19 |
「ドリアン・グレイの画仙女」 異形コレクション34巻『アート偏愛』収録
<あらすじ>
「祖国と四億の人民を救うため、この少女をわたしに譲っていただきたい!」
百年前に撮影された東洋人少女の裸体写真と、それが添付された古いタイプ原稿。
それは十九世紀末、のちに清朝を倒し「中国革命の父」と呼ばれる革命家・孫文が、
最初の武装蜂起に手痛い敗北を喫し、ロンドンに亡命していた若き日の体験を記した著書
『倫敦被難記』の破棄草稿だった。
そこに書かれていた、現存する同書とはまったく異なる、奇怪な事件の顛末とは――
世紀末ロンドンのチャイナタウン。
銀板写真を用いた神仙術で、死して復活する不死身の肉体を持った「屍解仙の少女」をめぐり、
革命の再起を目指す革命家と、英国人の老オカルティストが対決する。
「羽化登仙――という言葉がある。
美酒に酔うさまを表現する詩的な慣用句だが、
本来は人が仙界に入るとき、蝶が蛹から羽化するように、
死すべき古い肉体を脱ぎ捨てて、不滅の肉体へ生まれ変わるという伝説を意味するそうだよ」
霧深いロンドンの小さな写真館で、少女はそっと黒いベルベットのドレスを脱ぐ。
白い蝶の化身のような裸体は、まさにこの美しい詩句の受肉だ。
老オカルティストはファインダーをのぞきながら言う
「彼女の美しさを永遠に残すこと。わたしが望むのはそれだけだ」
孫文は歯を食いしばり、この「邪悪な頽廃芸術」を凝視しながら思う。
「彼女がいれば、この奇跡の乙女がいれば、革命は甦るというのに――!」
果たして孫文は、謎の老人から少女を奪い取り、「中国革命のジャンヌ・ダルク」とすることができるのか?
<あとがきみたいなもの>
主人公の革命家・孫文と敵役の老人が怪画家のモデルだという『ドリアン・グレイの画像』は
日本では意外と知名度が低いらしい、というのがひどく不安で、
書き始める直前まで「刺青」をめぐる和風の話とどっちにしようか迷ってました。
「孫文? ドリアン・グレイ? 誰それ?」
とか言われて読む前にスルーされたら悲しいなあと。
一応、作中で必要最低限は触れてるので、まったく知らなくとも読めるはずなんですが。
結局、井上雅彦さんに
「『異形コレクション』の読者なら大丈夫でしょう」
と背中を押してもらって、書くことができました。
今回のテーマは「芸術」
たぶん絵画とか音楽とかはもっと詳しい方が書かれるだろうと思って、
十九世紀半ばに誕生したばかりの「写真」、それもヌード写真を選びました。
十九世紀末、写真はまだ「肖像画の安い代用品」でありアートとして認められておらず、
ましてヌード写真なんてひとからげに猥褻なポルノとしか認知されていなかった時代――
――とはいえ、実は英国史上未曾有と言っていいほどポルノとオカルトが大流行し、
それが写真機という新発明とむすびついた「ポルノ写真」と「心霊写真」が大量に流布した時代でもあります
(これを「ヴィス・アングレ(英国的悪)」と呼ぶ、
と参考にしたある著名な英文化史研究者の本には書いてあったんだけど、
他で見たことないですこの言葉)。
この時代には新発明の簡便な銀板写真機がすごい勢いで普及したのだけど、
その大きな要因が「ポルノ写真の需要」
(裸婦写真そのものも地下で売られていたし、娼館のカタログ製作にも使われました。
それ以前は似顔絵の版画だったそうです)
だったというのは、ビデオデッキやインターネットの普及を見るようで、なんだか面白いです。
百年以上の昔にも、ポルノグラフィはメディア普及の推進力だったんだな。
じゃあぼくもその力を拝借してみようか、と密かに企んでいたのだけど、
あんまりやらしくならなかったのが無念。
でもある女性読者様からは
「少女がカメラの前で服を脱ぐシーンが大変にフェティッシュだった」
と好意的な感想をいただいたので、よしとしましょう。
「赤頭巾ちゃんに気をつけて」小説宝石特別編集『英雄譚』収録
<あらすじ>
「その夜、ぼくが出会った運命は、美しい少女の姿をしていた
……ただし、首だけの」
時は近未来。
十四歳で大学医学部に入学、二十二歳で助教授になった若き秀才「ぼく」には、誰にも言えない悩みがあった。
女の人が大の苦手、まともに話すこともできず、目が合うだけで赤面し、手を握るなんて夢のまた夢。
なんでそこまで意識してしまうのか。その原因は彼の心の奥底に秘めた秘密にある。
「ぼくは、女の子を切り刻んで、食べてみたいんです!!!」
とはいえレクター博士みたいな猟奇殺人鬼になる度胸もなく、
同世代の教え子にからかわれ、いいように使われる、哀しい青春を過ごしていた。
そんなある日、医療廃棄物の山から、愛らしい女の子の声が彼に話しかける。
「お願い、すてないで……」
それはヘルメス・セル――人体のあらゆる部品にクローン培養できる人工細胞――から生まれた不良品、
脳神経を作るはずが育ちすぎてしまって廃棄された、美しい人造人間の少女だった。
……ただし、首だけの。
生まれたばかりの少女はなぜか「赤頭巾」と名乗り、
あの童話そっくりの、しかしなまめかしい来歴を語る。
そして彼女が言い出したのは、「ぼく」に首から下の体を作って欲しい、というとんでもないお願い。
「狼に食べられたわたしを、どうか救ってください。
ただでとは申しません。もし、お願いを聞いてくださるなら……」
なまめかしい首だけの赤頭巾。臆病な人食い狼の「ぼく」。
はたして「ぼく」は欲望を乗り越えて、狼から赤頭巾ちゃんを救う猟師になれるのか?
<あとがきみたいなもの>
「いきなりヒロインの首がもげてる」
というデビルマンなら逆上して即人類滅亡しそうな間違った設定ですが、
(字面が凄惨なのでせめてピンクにしてみました)
「間違った設定から恋が始まる」
というか
「生首から恋が始まる」
というのも刺激的でアーバンなファンタジーなんじゃないかと思いまして。
いやウソです。
首から上だけという制約でエロティックな描写をしてみようというのが密かな目的で。
髪とか目とか唇とか、そして言葉だけで誘惑する。フェティシズムですね。
「優れた娼婦はあえて肌を見せないものだ」
という話が谷崎潤一郎の『痴人の愛』の中にあったと思います。
見せようにも首から下がないんだけど。
BGMは『顔だけ見て』(トランジスタ・グラマー)
なんでそんなの書こうと思ったのかというと、
親しくしていただいている官能小説家・森奈津子さんの著書を読んで、
「ぼくも官能SFを書いてみよう!」
と急に思い立ったわけです。
「リスペクト森奈津子!」
「セックス・SF・ロックンロール!」
「ドントトラストエニワンオーヴァーザサーティー!」
森さんはそんなんじゃない。
まあとにかく、そんなふうに一人で盛り上がったわけです。
まあね、もうぼくもいい年した大人ですよ。いつまでもテレてちゃいかんですよ
作家は文学者である前にエンターテイナーであらねばならんのであって、
だとしたら「官能」は強力な武器になるはずで、
そういう基本を身につけずにいつまでもブンガクだいやテツガクだ
だれも聞いてない話を一人でブツブツつぶやきながら
あっちこっちフラフラしておまえは迷子の三歳児か!
ああ!? 聞いてるのか!?
脳ミソ動いてますか!? ていうか入ってますか!?
インテル入ってますか!? あなたの前頭葉に!?
入ってますか―――――!!!!?
入っていればなんでもできる!
いくぞー!
いーち、にーい、さーん、
よ――――――――――――ん!!!!!!
入ってますかマクフライ!?
ハ・イ・ッ・テ・マ・ス・カ、マ・ク・フ・ラ・イ!!!!
(お、いい感じに空回ってきた)
と、そんな具合にいじめっ子のビフにリズミカルに
前頭葉を小突かれるようなショックを受けましてね。
で、ある夜中に突如として
「そうだ、『赤頭巾ちゃん』で書こう!」
と天啓を受けましてね。
「そうだそうだ!
だって『赤頭巾ちゃん』はみんな知ってるしな!
かわいくてやらしいしな!
略してカワイヤラシイしな!」
とクールかつテクニカルに考えましてね。
「赤頭巾ていってもハッピーエンドなグリム兄弟じゃない、
残酷童話のシャルル・ペローの方で行こう
『おまえの小説はフランスだのブンガクだの間口がせまいのが弱点だ』
とかもう言わせねえぞチクショウ!」
とか辛い思い出がよみがったりしてもくじけずに
涙の軌跡をキラキラ引きながらベッドから跳ね起きまして。
拳銃のように立てた人差し指でビリー・ザ・キッドの抜き撃ちのごとく
目にも止まらぬ速さでパソコンのスイッチを入れまして。
でも最近調子の悪いパソコンが立ち上がるまで
椅子で膝抱えてボヘーっとしてまして。
真っ暗な部屋で白く光るディスプレイをながめつつ
両手で自分の膝抱えて『両手いっぱいのジョニー』をくちずさんでいまして。
「りょーおーてーいっぱいのジョニー
もちきーれないーほどのゆめー♪」
持ちきれちゃいまして。
そしたらなんだか哀しくなってきまして。
どんどんどんどん哀しくなってきまして。
そしてパソコンはなかなか立ち上がりませんで。
ウンともスンとも言いやがりませんで。
これはアレだ、近所の小学生が昨年のクリスマスにパパからもらったPSXに
実はグレムリンがすみついていて
水ぶっかけたりとか十二時過ぎてからエサやったりとか
やっちゃいけないことを予定調和的に次から次へやってしまって
望みもしないおすそ分けがうちのパソコンにもとり憑いたのだとクールに推理しまして。
推理したつもりになりまして。
存在しないパイプをふかしたりコカインをうってみたり
存在しない助手に初歩だよワトソンくんとか説明しているうちに
「やむをえん、こういうときはアレだ、
さらに水ぶっかけてグレムリン大量生産して東京中を巻き添えに、
じゃなくて水ごりだ! 神仏に祈るのだ!
おパソコン様をお清め申し上げるのだ!!」
とマーベラスでナイスなアイデアを思いつきまして、
パソコンかついでワッショイワッショイ言いながら風呂場へ突撃しようとしたところ、
友達のいない魔女が一人でサバト開いてるかのような狂騒ぶりに起きてきたももさんの
無言のカミソリフックがぼくの右頬にヒットして目が覚めました。
(……一旦クールダウン……)
ええ、ウソです。
パソコンのスイッチ入れた以後はウソです。
哀しくなんかないです。
で、一晩でプロットが書けまして、そしたらホラーっぽくなったので
お世話になってる『異形コレクション』担当の編集者さんに送ってみたんですが
「惜しい! いま『妖女』をやったばかりで、合うテーマがないです。
保留させてください」
とのお返事。
しょうがないのでまた椅子の上で膝を抱えて
「あなたを待つのーシャンゼリゼー」
とうつろな目で歌っていたら、
おなじ光文社の『小説宝石』の編集者さんがプロットを見て気に入って下さり、
「『宝石』の増刊で書きませんか?」
とのお申し出。
待てば海路の日和あり! さあ漕ぎ出そう、血の海へ!
テンションが下がらないうちにと思って
「しっぽをたてろー!」
とシャウトしながら一気呵成に書き上げ、
異例の速さでアップしたので、じっくりとイラストをお願いする方を探しました。
そして考え抜いた結果、個人的にファンでもある高橋葉介さんに二枚のイラストを描いていただきまして。
物憂げでやや吊り目気味の赤頭巾の裸体と、牙をむいた凶猛な狼が、
トランプのクイーンみたいにさかさまにつながってる絵は、
大変に大変に甘美でございました。
「大人はわかってくれない」東京創元社『ミステリーズ!』vol.9収録
「ちきゅうはおっきな板になってて、
おっきなカメとゾウのせなかにのってるんだよね?」
「それは1610年にガリレオという人が『星界の報告』という本で証明している」
「にほんのシブヤ駅にはかしこい犬がいて、
ずっとごしゅじんさまのかえりをまってるんだよね?」
「あの犬はわたしを待っているのだ」
「えーと、えーと……
おじさんは、ずっとずっと、トモのおじさんだよね?」
「おじさんは、ずっとトモのおじさんだよ」
<あらすじ>
フランスの地方都市に住む五歳の狩野朋は、ワンマン社長で家庭を顧みない頑固者の父親より、
飄々とした書籍装丁師の叔父、狩野大介になついている。
古ぼけたパサージュに店を構えるおじさんは、
不思議で愉快な、時々テツガク的な話をたくさん知っている。
ワックスのにおい、はさみでジョキジョキ革を切る音、
ガラス天井のやわらかい日差し、おじさんの膝の上、不思議なお話…
それが彼女の一番幸せな時間だった。
しかし大介は、ある日突然姿を消す。
書籍装丁師であり凄腕の贋作職人でもあった彼は、
フランス進出を狙うクロアチア・マフィアによる、
高額古書偽造計画に一枚噛まされていたらしい。
それを裏切ってマフィアが一網打尽になっているころには、大介は報復を逃れて雲隠れしていたのだ。
いったいどうやって?
大介が姪の朋に語った他愛もないホラ話は、彼が贋作のなかに挿入した一目でわかる嘘の記述――
めったに買った本を読まない古書マニアが、きまぐれにそのページを開けたときに爆発する、時限爆弾だったのだ。
「以上、これがわたしの人生で最初の悲しい思い出となった。
おじさんによれば、これでわたしはあなたの同情をひけたはずで、後は簡単なはずなのだけど、
そんなことはこれっぽっちも信用していない。
なぜならば、わたしがこの経験から学んだ教訓はただ一つ、
『おじさんのいうことは信用できない』
ということだからだ」
それから八年――
日本の祖母の元に預けられ、名門女子校の中学生になった狩野朋が、
クリスマス休暇でフランスの実家に帰ってくる。
ウソつきが大嫌い、皮肉は人生の知恵、大人は頼りにならない。これが小さな彼女が得た人生の不文律。
しかし、八年前に逮捕されたマフィアのボスが出所してファミリーを再興し、
行方不明の大介を探していると聞いては黙っていられない。
しかも彼はこの町に帰ってきていて、マフィアの刺客がそれを追ってきているらしい。
なぜおじさんがこの街に? それは後回しだ。
「刺客より先におじさんを見つけないと!」
パリのチャイナタウンから事態の解決に来た探偵・李さんと二人、
朋は危地に立たされた叔父を探して、雪の街を奔走する。
……が、煮ても焼いても食えないハードボイルド探偵・李さんとの珍道中は、なかなか前途多難なのであった。
<あとがきみたいなもの>
SF要素なし。
くびもげなし。
主人公は小生意気だけどフツーの女の子。
ちょっとだけ愛と希望のある話。
なによりちゃんと(いや、これまでに比べれば、ですが)ミステリーになっている。
フレンチ・ノワール趣味はいつもどおりだけど、
けっこう珍しいものが書けた。
人間、努力すればなんとかなるもんだね(誇大妄想気味)
「萌え」ってなんだろう、と常々考えてまして。
というのは別にAさんとかOさんとか評論家の方々みたいな考察ではなくて、
単純に「萌え」という心理がよくわからなかったのです。
で、ああだこうだと考えていたら煮詰まってしまい、
なかば錯乱した頭で
「あ、これ『もえ』って書いてあるから参考になるかも」
とビデオ屋で手に取ったのがなぜか『燃えよドラゴン』だったあたり
もう相当にアレな状態だったのだろうと思うけどもまあ過ぎたことです。
ところがカンフー映画史上もっとも有名なあのセリフ、
「考えるな、感じろ!」
でなんかヒントをつかんだ気がしまして。
「そうだ、考えちゃダメなんだ!
まずはなにも考えず頭をからっぽにして
ぼくが素直に『かわいい』と感じるものをつかむのだ!」
と開眼したものの、あまりに素直にやると
ひたすら猫をながめてるだけの話とかになりかねないので、
やっぱり考えこんでしまうのでした。
で、今度はジャック・タチの『ぼくのおじさん』を参考にしてみまして。
子供っぽいけど飄々と生きてる大人と、大人になりかけの少年。
「パパは叔父さんをダメな大人だという。ぼくもそう思う。
けど、ぼくはおじさんが大好きだ」
お、この「関係」は「萌え」るぞ、ぼくは。
女の子の方が華があるので姪っ子にしてみたらどうだろう。
そして「誰かが誰かを求める話」というのはドラマとしてグッとくるので、
二人をはなればなれにしてみたらどうだろう。
あんまり素直に「好き」とか言ってるとつまらんので、女の子を意地っぱりにしてみよう。
とか考えてたら、この作品ができました。
しかし、ある読者の方からは
「かわいいけど萌えじゃない」
という意見をいただきました。
ううう、難しい。かわいいと萌えはちがうのか。
ともあれ、割と反響があったので、続編を書かせてもらうことになったのだけど、
スケジュールが合わなかったりなんやかんやあって、かなり間が空いてしまいました。
現在、鋭意執筆中。
「苦艾の繭」光文社『異形コレクション』24巻「酒の夜語り」所収
「ミハイル、きみもいつかは出会うだろう。見知らぬ自分自身に」
<あらすじ>
ロシア語で「ニガヨモギ」を意味するあの大災害の跡地にやってきたクレムリン直属公安組織「ズブロッカ」の
新人エージェント、ミハイル・スミリャノフ。彼はそこで元KGB高級官僚ロマネンコの率いる兵器マフィア「赤いスミノフ」が
廃棄された原子力施設の地下に隠蔽されていた新兵器を掘り出し、実験を行なっているという疑惑を調査に来たのだった。
コードネーム「苦艾の繭」、連邦崩壊とともに消えた未知の兵器。
その開発に携わったというゲオルギー博士は暗殺者に襲われ、末期に言い残した。
「あれは、誰もが蒸し返したくない、冷戦時代の落し子だ……」
その言葉、そして荒涼とした寒村の光景に、核閉鎖都市で育った思い出がミハイルの胸をよぎる。
そして自分をそこから救い出してくれたロマネンコ大佐……
だが父とも慕った大佐は、ミハイルの持つある不思議な能力に目をつけ、ミハイルを実の母から金と圧力で買っていたのであった。
二人の絆はあの連邦とともに滅びた。そして今、いかなる運命の悪戯か、二人は対決の時を向かえつつあった。
しかし……オレンジ色に輝く発光物体、銀色の人影、体の一部をえぐられた家畜の死体……いったいこの村で何が起こっているのか?
そんな時、聞き込みの最中に知り合った謎のドイツ人美女エヴァ・ハイドリッヒが銀色の小人のような影に不思議な光線で撃たれる!
「あれが新兵器なのか、しかしあの奇妙な人間は一体!?」
間を置かず地下秘密基地から一斉に飛び立つUFO船団、そしてアマゾンから船籍不明の軍艦が現れヨーロッパを目指しているという急報が!
エヴァは息も絶え絶えに語る。
「鷲はまだ……生きてる……」
そのころモスクワはUFOのレーザー空爆で焦土と化し、新兵器で武装した旧KGBマフィアがクレムリンを占拠、大統領のブラックボックスを強奪。
大統領の椅子に座り、あの引きつった笑いを浮かべ「ある晴れた日に」を口ずさむ謎の男、ストレンジラブ博士。
「まずはイギリス、ロンドンがいい。燃えろ燃えろ、ロンドン橋よ落ちろ、フフフフ……む、これは!?」
そう、ブラックボックスの核ボタンは六個、ハズレを選ぶと自分が核の炎に包まれるというロシアン・ルーレットだったのだ!
ミハイルの腕の中で冷たくなっていくエヴァは、走馬灯のようによみがえる少女時代の記憶にあらぬ言葉を口走る。
「先輩、第二核ボタンを下さい……」
その言葉に隠された暗号とは!?
「いいや、全部押しちゃえ」
ストレンジラブ博士の暴走!
「ワレワレ人類ノ友達。地球クレ」
「ゴメン、よそ当たって!」
ホワイトハウスで盗聴された大統領と宇宙人の秘密会談!
「ついに始まった……スーパーモスキート計画だッ!」
キバヤシの誤解が人類滅亡の時計を加速させていく!
ミハイルは叫ぶ!
「嘘ばっかり書いてんじゃねえ!」
すみません。以下が<本当のあらすじ>
「酒と思想は人を役立たずの酔っ払いに変える。そんなだからファウストもニーチェも女に振られるのだ」
一九一五年、冬−−世紀末芸術を彩った魔酒「アブサン」は全面的に禁止された。
時は流れ第二次大戦下のベルギー。ナチ占領下の首都ブリュッセルで、不眠症のアブサン密売人ヨハネスは
本人も御禁制のアブサンに溺れ、飲んだくれの日々を送っている。
眠れぬ夜の理由は彼の過去にまつわる事件にあるらしいが、それは誰にも語ったことがなく、本人も思い出すことを拒んでいる。
そんなある日、いきつけのカフェに現れた謎の外国人が彼に秘蔵のアブサンを売りたいと申し出る。
それは数あるアブサンのレシピの中でも秘蔵の逸品<ジャンティアナ・リュティア>、
工場生産ではなく工房で密造された品である。
「誰にも転売してはいけない。これは、あなたのための酒です」
外国人はサンプルを置き、一ヵ月後にまた来ると言い残して去っていく。
誘う馨り、憂鬱な緑色、踊る金色の粒子……
それが封印された記憶を呼び覚ます、という不安に駆られながらも、呑まずにおれないヨハネス。
「この酒を造れる蒸留職人は死んだはずだ。これは、死んだはずの酒なのだ」
その酒が、なぜここにあるのか? あの男はヨハネスの過去を知っているのか?
売主はヨハネスが賄賂を送っている駐ベルギーSS特務少佐ラインハルト・ヘリゲルと関係を持っているらしい。
疑惑。不安。不可解な胃痛と体調の変化。そしてよみがえる少年時代の記憶。
双子の姉弟、リンドウの野原、不思議な老人、森の工房、密造酒組織……
ヨハネスは酒に逃げる。しかし本当はどこにも逃げる場所などない。いや、わたしは本当に逃げたいと思っているのだろうか?
約束の日は、無慈悲に、刻一刻と近づいていた……
「ニガヨモギ ノ マユ」と読みます。初のアンソロジー参加作品。
実はこの前の「マスカレード」で初お目見えとなるはずだったのだが、その時は
私事と他の仕事が忙しく涙を飲んでお断りしたものの、翌月に「あのー、うちの原稿覚えてます?」
と編集部から不思議な電話、どうも連絡がうまく伝わってなかったらしく、それならばと奮起してダメモトで一晩で短編を書いたら
さすがに筆が荒れてボツってしまい、結局次のコレで初登場となった、といういわくつきの作品。
(後で聞いたが監修の井上雅彦氏は小説には非常に厳しい方で有名だそうな。その節はトンチキな小説を送って失礼しました)
その後しばらくして、SF作家クラブ総会で井上氏にお会いした時に
「次の企画が進んでいるので、今度こそ書いてくれたまえ」
と熱いアプローチ。しかもテーマは「酒」。
こちとら痩せても枯れても酒どころニイガタの酒屋の息子、終戦直後、神経に障る粗悪な密造酒(メチル)に代わって
「安全な酒」を開発、密造し、酒税法違反で摘発されても「誰もが酒を飲みたいこの時代に、おまえらの代わりに酒を造って何が悪い!」
とお上にタンカを切ったという曽祖父の血を引く、いわばアル・カポネの曾孫である。(結局敗訴したらしいけどね)
そんなわけでヨシカワの底力を見せるべく趣向を変えて日本酒の話でと思ったら
「日本酒で書きたいという人が多いので、キミはフランスで書きなさい」
と先手を打たれる。ううむ。
で書いたのだけど、かなりデカダンなムードに仕上がった。
ひいおじいちゃんの体育会系な熱い血はたぶん一滴も引いていないことが判明。だめじゃん。
で、フランスでワインではあまりにベタなので、選んだ酒は「アブサン」である。
十九世紀末パリで大流行し、夜毎カフェに集う多くの芸術家たちを破滅させた悪名高き魔酒である。
第一次大戦くらいから準麻薬扱い。昨年EU内で「主成分ツジョンがごく低濃度なら認可」という規制緩和がなされたが、
やっぱり本物とは雲泥の差、というか当時のアブサンを再現すること自体がもう難しいらしい。
(大麻に近い麻薬成分があるとか、長年飲むと神経をやられるとか。実は詳しくはわかっていないらしい。
アブサン愛好者で有名なのはロートレック、ランボー、ヴェルレーヌ、ピカソが独自の自家製アブサンを調合していたという逸話もある。
映画『ムーラン・ルージュ』ではティンカー・ベルみたいな<アブサンの精>が出てきて、ロートレックたちが見事にラリってました)
頽廃のミューズ。小雨の降る戦時下のブリュッセル。「死せる妖精」アブサンの密売人。悪名高い(らしい)ベルギー・マフィア。
もう完全にぼくの土俵である。
ちょうど論文のジル・ド・レ侯の研究に絡んで、「錬金術」について調べていたので、作品に盛りこむことにした。
錬金術、占星術、魔術というのは、表に裏に中世ヨーロッパの「知」の三本柱だったのだが、
ことに錬金術は「百科全書」とならぶ近代科学(主に化学)のルーツとして知られている。
で、フランケンシュタイン博士とかカリガリ博士とか、レトロでゴシックでノワールなSFムードになれなれなれと念じて書いたのだが
井上氏からはお褒めの言葉とともに「魔術小説」という称号をいただいた。あれ?
一応「ホラー」として書いたのだけど、もしかするとコレはヨシカワ初の「恋愛小説」かもしれない、と言い添えておく。
「ギャングスターウォーカーズ」
第1話 地虎的狂走曲(トリュアンズ・ラプソディ) / 『ジャーロ』No.8掲載
「近未来、西と東を英仏資本とマフィアが分割統治する城市国家上海を
<銀髪の地虎(チーフー)>ルークが駆け抜ける!
福建軍閥のバイク兵部隊、李教授の死体をさらった首泥棒、元ヤードの処刑人、
還ってきたルークの鮮やかな銀行強盗、福建外人部隊による全上海への宣戦布告!
あとお茶いれるエマ!
あとなんか屋台でオムレツ食ってビール飲んで煙草ふかす謎の猫目フランス女!
英国マフィア「聖ヒラム騎士団」こと<シンジケート・オブ・ナイツ>の見習い騎士、
日英ハーフの少年ワタルは騒動に巻き込まれ、やがてその数奇な血統を知ることになる。
事件の背後に見え隠れする李教授の計画とは? いばら姫のごとく眠り続ける華僑の少女を
幇主と奉る黒幇(犯罪結社)「龍頭聯」(ロントウレン)の秘密とは?
再燃する革命の炎を前に、ナイツ上海支部の運命やいかに!」
(ちょっと第二話のさわりも混じってます)
<舞台は近未来、城市国家・上海の英仏租界>
犯罪都市は数あれど「魔都」という妖しい響きがしっくりくるのは、
やはりというかズバリというか、そう、上海。
今までのシリーズと同時代の、ヨーロッパ以外の世界はどうなってるか
というところも描いて深みを増してみようか、という意図もあったのですが、
正直言えば前から書いてみたかった素材だったのであります。
アジアとヨーロッパの出会うエキゾチックな文化的混沌。
かの有名な青幇をはじめネオンの影に跳梁する秘密結社。
租界には各国のスパイが暗躍し、陰に陽に野心と謀略が火花を散らす大都会。
それ自体が異国情緒を基調とするアールデコ建築と(アールヌーヴォーよりむしろ好きだ)
中国風の毒々しさスレスレ(失礼)の色彩感覚の美しさ!
ただ、現在の上海はケ小平の「金持ちになれる者から、まず金持ちになれ」という
例の南巡講話のおかげで未曾有の開発ブーム、近代的ビルも建ち、観光客も増え、
中国一治安の良い都市になってしまったそうで、チンピラぐらいはいてもいわゆる
マフィアとか黒幇(これは固有名詞ではなく蔑称みたいなもの)とかいった犯罪組織は
ないそうで(本当かどうか怪しいけど)それはそれで大変喜ばしいことであります。
ま、そんなのお構いなしだけども。派手に暴れます。
<質疑応答>
「卵十六個のオムレツなんて食えるのか?」という質問をいただきました。
実際、革命期フランスのあるお姫様が食べてた記録があります。
バルザックなら軽く三十個はいくかな。フランス人てすごいね。
そりゃあシラクもルペンも(以下、政治的配慮に基づき削除)
『シガレット・ヴァルキリー』 パレ・フラノシリーズ番外編
「あたしに頼んだ時点で、これはあたしの仕事。あたしの気の済むように自分で決める!」
(『フィガロ』2068.12 インタビュー「ヴァルキリーはかく語りき」)
「どの世界にも天才というものは存在し、歴史はその天才たちによって動いてきた。
あたかも神が遣わす御使いのように、あるいは黙示録の災いのように、
天才はおのれ自身も知らぬ間に地上へ姿を現し、新しい時代へと世界を動かす。
だが、われわれは世界にこれ以上の変化を望まない。
天使も、神も、もはや不要である。世界はわれら人類のものなればなり。
万物の霊長に世々限りなく栄光のあらんことを。何も終わらぬため、何も始まらぬため」
(私家版『テウターテス・ギルド使徒信条』)
「前者はあと66年待たなければならないが、
後者は現在ローマ法王庁地下13階『第二禁書室』に一冊だけ保存されている。
しかるべき研究者の資格にあわせて、枢機卿以上のカトリック聖職者、閣僚クラスの議員、
あるいはカルロ・バルツィーニ氏(シチリア在住)の紹介状があれば、拳銃を携帯した警備員同伴で閲覧はできる。
興味のある方はいずれかの筋に紹介を請うとよろしい。
ただし、水曜日は休館日である。」(『犯罪学研究年鑑』付録「所蔵詳細」)
<あらすじ>
シモーヌ。おそらく偽名。ファミリーネームはなし。
職業<ローニン>。つまり一匹狼の職業的犯罪者。隠密接敵、夜襲、暗殺が専門。
一部の人間は<死神ヴァルキリー>と呼ぶが、あだ名で呼べば十中八九殴られるので注意。
愛用の煙草はゴロワーズ。好きな酒はビール。銃は使わない。西部劇が嫌い。時代劇は好き(?)
そんな彼女に、ある馴染みの組織から仕事の話が舞いこむ。
「地中海の人工島のカフェで行なわれる取引を襲撃し取引品を奪取せよ。立ち会った人間はすべて抹殺すること」
少々いわくつきのこの依頼、しかし馴染みの相手の願いでもあり、「稼ぐ端から遊び尽くす」
が信条であるシモーヌは貯金が底をついていた。
で、作戦指揮官でお目付け役のリィ教授、その助手のエマとチームを組んで、しぶしぶながら仕事に当たる。
地中海に浮かぶ巨大な十九世紀都市のコピー、<パサージュ・ド・リラダン>での仕事は
順調なはずだった。が、最後の一人は突然現れた義足、仕込杖の男に斬殺される。
「それは俺が彼らに盗まれたものだ。返してもらおう」
作戦失敗。さらに奪ったトランクの中から出てきたものは……
「名前」と「絆」、「父」と「子」、「自由」と「犯罪」、「正統」と「異端」をめぐる因縁の対決が、
失われたギャング・ファミリーの聖地<パサージュ・ド・リラダン>で幕を上げる!
<もう一つの後書き>……あるいは<貰って困れ! ホームページ特別おまけ付き!>
「シモーヌを主人公にしましょう」と企画が持ち上がった段階で、実はかなり悩んだ。
気性荒ぶる用心棒。アンタッチャブルな暴れん坊。義理と人情秤にかけても交換レートは気分次第。
要するに、今までの主人公とはまるきり違うタイプなのである。
しかも妙齢の美女。自慢じゃないが、なまじ哲学なんぞかじっていると、作中でも現実でも女性を扱うのに慎重になってしまうのである。
ステレオタイプな「女らしさ」なんぞ書いては女性に対して無礼であろうし、
かといってひたすらセクシーだったりマッチョだったりと割り切ってしまうこともできない。
つまり、女性を書くのが苦手。それが出ずっぱりである。
ぼくは一年前の自分を激しく呪った。
「・・・・・・こんなヒロインを主人公にして、ぼくの文体でどう書けというのだ!」
と、まあ、
最初は頭を抱えたのだが、二転三転七転八倒しつつも七転び八起き、
自らを鞭打ちどうにか発刊秒読みに至った現在は
「・・・・・・努力すれば人間には不可能なんてないのだなあ」
と誇大妄想狂気味な感慨を禁じえない。わからんものだ。
タイトルはマイナーな某洋楽の歌詞の一節と、『ゴロワーズ』というフランス煙草の
パッケージから着想し、名付けた。
『ゴロワーズ』はフランス軍でも支給される煙草で、愛用者はおっさんが多い。
(若い人はジターヌなのかな。よく知らないけど)
で、パッケージには空色の地に銀で翼のついた兜の絵が書いてある。
「ゴロワーズ=ゴール人の女性形複数」、「翼の付いた兜」、「軍隊で支給」
というヒントから独自のプロファイリングによって推理した結果、
「ああ、これはヴァルキリーのことか」という結論に至った。
一般的にはヴァルキリーは戦女神であり、戦勝祈願の信仰の対象と思われている。
軍隊で支給されているのも武運を祈る縁起担ぎなのだろう。
だが古い神話では、戦乙女ヴァルキリーは
「戦場において優秀な戦士を選んで殺し、その魂を軍神の宮殿へ運ぶ」という。
戦死する人間は彼女が選ぶ。つまり、一種の死神であったらしい。
で、シモーヌの<不名誉な>あだ名としていただいた。
後になって「ゴール人はガリア人であって、ヴァルキリーの伝説はゲルマン人の神話である」
という当たり前の事実に気がつき(なぜ忘れる)、あわてふためくことになるのだが。
どちらもフランス人の先祖には違いないし、文化的には当時から混交しているのでよかろう、
と自分をだましだまし書き上げた。
ちなみにゴロワーズはブラック葉でやや辛口、コーヒーによく合います。
たっぷり時間をかけて美味しいものを食べ、軽くデザートも済まし、
濃いコーヒーをきゅっと一杯飲んでからゴロワーズに火をつけたりすると、
これはもう……なんとも……あ…ああああああああ……
言葉にならないので書かない。
ぼくはライトスモーカーで、食後に一mgのやつを一服する程度だったが、近年はほとんど吸わなくなってしまった。
公共の場から灰皿が激減しているためである。
某有名思想家氏はアメリカの大学へ研究に行った、と思ったらいつのまにか帰って来ていた。
むこうのカフェは日本以上にどんどん禁煙化が進んでいるらしい。
さすがはかの禁酒法の国、カフェの店主から大統領までやることが極端だ。
そのうちアメリカから喫煙の自由を求めて亡命者が出るな。あと密造煙草を作るマフィア。
で、先生は怒って帰って来たとのこと。
なるほど、仕事よりも文化的生活が大事。正しい思想である。
健康には悪いが、人間は健康のためだけに生きているわけでもないのである。
「明日を思い煩うな」と聖書にあるし、十戒に喫煙の禁止はない。
でも歩き煙草はやめましょう。
吸わない代わりにコーヒーの量が増えたような気がする。胃が痛い。
『ボーイソプラノ』 パレ・フラノシリーズ第2弾 表紙→
その日、探偵ヴィッキーを訪ねてきた依頼人はふたり──ひとりは聖歌歌手の少年。
そして、もうひとりは血の匂いをほのかに漂わせた謎の男。
依頼は同じ、ある失踪した神父を探しだすこと。
調査をはじめた彼の目前で、事件は起きた。異形の猿人がおこなった狂気の犯行。
頭部をねじ切られ、指を食いちぎられた無惨な死体。
この街があるかぎり、わたしは不死であり、無敵であり、この街を呪い続けるだろう──
〈クトゥルフの呼び声〉と名乗り、探偵の元に届けられた警告の手紙。
それは、快楽の街に君臨する大いなる犯罪者パパ・フラノへの挑戦なのか? 【カバーより】
「その野蛮な愛は、スタンダールでは読み解けない」
「快楽の街で探偵が出会ったのは、人の無垢な魂と、肉体に封じられた暴力の呼び声!」
「SF+ロマン・ノアール+アクション+文学+ハードボイルド──全選考委員が絶賛した
若き才能が描く、ハイブリッド・エンタテイメント。書下し!!」 【帯より】
『ペロー・ザ・キャット・全仕事』 第2回日本SF新人賞受賞作 表紙→
21世紀も半ばを過ぎ、第三次大戦後のフランスに建設された暗黒街<パレ・フラノ>、
ペローはそこで入手した機密を利用し、意識をサイボーグ猫に送信・転移させる
システムを完成する。
「誰にもつかまらない人・猫の二重生活」のはずが、ギャングにつかまって・・・・・
卒論書きながら、よくこんなもの書き上げたと思うが、まあ奇跡というものは思わぬときに起きるものである。
起きて欲しいときには起きないくせに。
審査員の先生方からは「オシャレ」、「素敵でスノビッシュ」、「引きこもり」などなど、好意的な感想を賜った。
やれ嬉しや。しかし作品は必ずしも作家と一致しないのであしからず。引きこもってません。
作中、「主人公がエリート・ギャングに強制就職」という場面は、当時就職活動(大学院受験準備と平行して
一応やっていた)をしていた作者の気持ちが如実に現れていて、涙を禁じえない、と友人。
実は作者は猫を飼ったことがないのだが(実家ではチャウチャウ犬を飼っていた。二年前、大往生)、
大学へ向かう山道に馴染みの猫がいる。賞金でモンプチをおごろうかと思う。
「血の騎士 鉄の鴉」 『SFJapan』02号掲載
1945年春、ベルリンはソ連戦車隊に包囲され、ナチス・ドイツの命運は風前の灯だった。
そんなとき、オットー中尉へSS長官ヒムラーから密命が下る。
「T国森林地帯、<不死侯>ことヴィスコフスキー伯爵の城を接収せよ」
作戦メンバーは兵士二人、そして黒づくめの「不動産鑑定士」ラインハルト・へリゲル。
暗黒の古城に銃声が、そして咆哮が響き渡る・・・!!
受賞第一作にして、いきなり作風を変える。しかもこっちが先に世に出るという。
こちらはぐっと重厚な雰囲気、なおかつホラーでアクション。
ぜひ読み比べていただきたい。イロイロ書けるんです。
節操なし? 引出しが多いと言って下さい。目下の課題は引出しの整理整頓ですが。
歴史ものなのは、引出しがタイムマシンにつながっていたためです。ウソです。
この手のネタはけっこう多いと思いますが、「ドラキュラは無敵の大魔王」
という不文律をひっくり返してみました。人間がドラキュラをボコボコに。
近代VS中世。合理VS非合理。理性VS狂気。明日はどっちだ。
いったい「悪者」は誰なのか。「暴力」とは何か。
しかし、短編には慣れていないもので、編集の方からは
「ちと詰め込みすぎましたねえ」と言われる。とほほ。